私はファイナンシャルプランナーとして独立して以来ずっと住宅・不動産業界に携わってきました。あこがれのマイホームを夢見て不動産や住宅展示場に足を運ぶご家族の期待に応えるべく、主に資金相談やライフプランの作成をしてきました。
しかしそこで実際に目にしてきた光景は私にとって非常に残念なものばかりでした。
その残念なものが私がこの住まいるブログを立ち上げた理由になります。
曖昧な予算が引き起こす現実
私は独立当初、安定した仕事を得るために不動産会社や住宅メーカーなどに相談に来られるお客様の資金計画(住宅を取得した後の生活が無理なくやりくりできるかの診断)のお手伝いをしていました。
当時は現場の営業さんからの依頼を受けてお客様の資金相談に乗させていただく、という流れで現場に携わっていました。
そこで現場にいる営業さんがこっそりと私にしてくるお願いはほとんどが以下の通りでした。
営業さん「このお客様は○○○○万円のお家を取得したいらしいので、もっと予算を上げてもらえますか?」
私「え!??」
営業さん「今月の成績が厳しいので何としても契約を取りたいんですよ!何とかお願いできませんか?」
私は現場でこの言葉に何度も出くわし、憤りを通り越して落胆しました。
不動産会社や住宅展示場の住宅メーカーは営利目的中心でお客様本位の住まい選び・住まいづくりは実際にはしてくれないのだなと痛感しました。
もちろん、そんな中でも常にお客様のためにというスタンスを貫く素晴らしい営業さんも出会いましたが、残念ながらほんの一握りでした。
家族との幸せな生活を夢見て相談に訪れてくるお客様に対し、住宅メーカーや不動産会社は将来的に到底返済できない無茶な物件をおススメしてくるのは残念ながら事実です。
増え続ける住宅取得が原因の破産
日本弁護士連合会(日弁連)の2014年の資料によると、破産理由として最も多いのが生活苦・低所得で全体の約60%で、住宅購入が原因による破産が何と全体の16%にも及んでいます。さらに、この割合は2008年の調査以降ずっと増加しており、今後も長引く不景気でさらに加速していくことが予想されます。破産者10人のうち2人~3人が住宅取得による破産という時代もそう遠くないでしょう(下図参照)

このように、住宅購入による破綻者が増えている原因としては、ひとえにお客様自身が適正な予算の把握ができていないことが挙げられます。
住宅を取得しようと思ったときに、ふと住宅展示場やハウスメーカー、不動産屋を訪れたときに皆さんはこのような質問を必ずといってよいほどに受けます。
「ご予算はおいくらですか?」
どうでしょう、この質問に対してあなたはどう答えますか?
まず的確に答えられる人はいません。なぜなら正確な予算を導き出すためには、将来に受け取ることのできる収入や支出を予測する必要があるからです。これをライフプランといいますが、素人がライフプランを作成するのは非常に大変です。
営業さんからしたら予算が曖昧なほうがより高い家を買ってもらえる可能性が高まるので、あえて素人であるお客様に向かって「ご予算はおいくらですか?」と質問をするのです。私はこうした行為が後々住宅ローン破綻を引き起こすきっかけになっていると思います。
適正な予算を知っていただくために
私の役割はお客様が憧れのマイホームを「適正な予算」で取得するためにまず最初に資金計画やライフプランを受けていただくことにあります。私はファイナンシャルプランナーであり家を売る仕事ではないのでお客様には決して無理をしてほしくありません。そのため、時には予算的にマイホーム取得は難しいという判断を下すこともあります。
住宅取得の際のファイナンシャルプランナーによる資金相談やライフプラン作成は非常に手間と時間が掛かるためまだまだ日本では馴染みが薄いのですが、私は一人でも多くのお客様が憧れのマイホームを無理なく取得して、幸せな人生を歩んでいただくために資金相談やライフプラン作成について知っていただき、「正しい」プロセスでマイホームを手に入れて欲しいと切に願っています。そのためにブログを書かせていただきますので少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
高田 充史